俳優、佐野史郎が青春時代、吸い寄せられるように通った地元・松江の喫茶店。魅力を探りに、記者が訪ねた。 お決まりの通学路に、ちょっとした異変が起きた。 宍道湖の対岸まで自転車で通った中学時代。橋を渡って商店街を抜け、松江城のお堀を越えて……。その途中、「毎日通(とお)ってた自転車屋がある日、おしゃれな木製のドアがある喫茶店に変わってたんです」。1969年。佐野史郎が14歳のときだ。 喫茶MGは、自転車屋の娘だった浅野淳子(あつこ、71)が母と弟と3人で開いた。もともと大の音楽好き。「お金もないのに良いスピーカーやチューナーをそろえてねえ」。知り合いに教わって買い集めた機材で、はやりのロックやフォークを聴かせた。 時代は学生運動が盛んだった頃。店のそばの公園までデモ行進した島根大の学生が、帰りがけに腹ぺこで店にやって来た。当初は3カ月でつぶれるだろうとささやかれたMGに、音楽好きの学生たちが集まり始めた。 高校生になっていた佐野も、同級生から評判を聞きつけた。ビートルズがかかっている喫茶店があるぞ、と。「最初に勇気を振り絞ってドアを開けたとき、確か『ラバー・ソウル』がかかってたんです」 コーヒーは1杯80円。当時出… |
佐野史郎の通学路に現れた喫茶店、木製の扉の奥には…
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