長崎の高校生が被爆者の肉声を2分半ほどにまとめ、動画投稿サイト「YouTube」(ユーチューブ)に投稿した。同世代の若者に核廃絶への関心を持ってもらいたい――。そんな願いを込めたという。
被爆者は今、核兵器と人類の関係は…核といのちを考える
動画を作製したのは、核兵器廃絶を求める署名を集める活動をしている「高校生1万人署名活動」のメンバー。第1弾は、原爆で大やけどを負った自身の「赤い背中」の写真とともに被爆の悲惨さと核廃絶を訴え続け、2017年に亡くなった谷口稜曄(すみてる)さんの証言。08年に作られた15分ほどのビデオを「誰でも気軽に見られるように」と約2分半に編集。2月15日に投稿した。
中心になって動画を作った長崎工業高校2年の里道彩夏さん(17)は、同年代の「平和」や「核廃絶」に対する関心が薄れていると感じる。毎年8月、小学生のころから学校で聞いた被爆証言。「また聞かんばと」。そんな風に面倒がる友人も、学年を重ねるごとに増えた。署名活動をしていても、若い人は「何の署名?」「やめときます」。そう言って立ち去ってしまうことも少なくない。
若者が情報を得るソーシャルメディアを使って高校生が発信すれば、被爆者の思いを届けられるのではないか――。そう考え、昨秋から試行錯誤を重ねてきたという。
「本当は証言を全部入れたかったけど、当時の状況をリアルに語っているところを大事にしました」と里道さん。完成した動画では、谷口さんが「地震のように地面は揺れ まだ爆風は続いていた」「核と人類は共存できない」などと、被爆直後の具体的な状況や平和への思いを語る部分を盛り込んだ。
今後は、ほかの被爆者の証言を月1回を目標に投稿し、英語や中国、韓国語の字幕をつけることも予定しているという。里道さんは「被爆者のリアルな思いを受け止め、平和や核廃絶に関心を持ってもらえたらうれしい」と話す。
谷口さんの動画はYouTubeの「高校生一万人署名活動実行委員会」のチャンネルで見ることができる。(田中瞳子)