国際原子力機関(IAEA)の天野之弥(ゆきや)事務局長は4日、定例理事会の冒頭で、北朝鮮・寧辺(ヨンビョン)の核施設でいまも活動が続いているとの分析を報告した。米朝交渉が行われていることを踏まえ、「具体的な非核化のための行動がとられることを願っている」と述べた。北朝鮮は米国に寧辺の核施設の廃棄を提案し、見返りに制裁解除を求めていた。
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天野氏は、2月末時点の寧辺の核活動について、衛星画像や公開情報に基づく分析結果を報告。昨年12月上旬以降、黒鉛減速炉の運転を示す兆候はないとしたうえで、使用済み核燃料再処理施設「放射化学研究所」では再処理活動の兆候がないとした。一方、実験用軽水炉建設は続いているとみられるほか、遠心分離器のあるウラン濃縮施設については、引き続き稼働している兆候があるとした。
ただ天野氏は、IAEAが査察要員を置いていないため、目的を確かめることはできないとした。IAEAの要員は2009年に国外退去させられて以降、北朝鮮に入っていない。
IAEAは昨年8月にまとめた報告書で、施設近くを流れる九竜(クリョン)江へのダム建設などを確認。同11月には天野氏が理事会への報告で、黒鉛減速炉と実験用軽水炉の冷却設備の変更に関連する活動が行われたとの見解を示していた。
黒鉛減速炉が停止した場合、燃料の再処理やプルトニウム抽出の段階に移るかどうかが注目される。(ウィーン=吉武祐)