静岡県熱海市の住宅街にたたずむバー「Muddy Cat」に、浮世絵から飛び出してきたかのようなネコがいる。その姿はまるで、幕末から明治にかけて活躍した浮世絵師・河鍋暁斎が描いた「猫又」さながら。店主の山村由香さん(36)がツイッターに投稿した「ポーズ写真」は、4万回以上もリツイートされた。
9カ月のメス、ミチルは元保護ネコ。山村さんが引き取り、昨年11月に同店にやってきた。客からは「バイトちゃん」と呼ばれて親しまれており、先輩ネコの「店長」(2歳、オス)と一緒に店中を駆け回る姿が訪れた客を癒やす。
1月下旬、自宅で日課のネコジャラシ遊びをしていた時に偶然撮れた1枚。浮世絵みたいだな――。そう思いながらいつものように店のアカウントに写真を投稿した。「河鍋暁斎っぽいの撮れた」
見開いた目と、歌舞伎の見得(みえ)のような立ち姿。ネコの妖怪の猫又をほうふつとさせる写真は反響を呼び、撮影当日の夜には1万リツイートに達した。投稿を見て遠方からミチルに会いに来た客もいたという。「猫又ポーズ」は、ネコジャラシを思いきり捕まえようとする瞬間によく飛び出す。「河鍋暁斎もきっと、ネコのこういう姿を見て絵を描いたんだろうなと思った」と山村さんは笑う。
普段は相手をする人間の方が飽きてしまうくらいよく遊ぶというミチル。気が向けば、客のひざに座ることもある。山村さんは「店の2匹は元々は保護ネコ。実際に来てふれ合ったり写真を見たりして、これを機に保護ネコに興味を持ってくれる人が1人でも増えたら」と話す。(松田果穂)