統一地方選前半戦の政令指定市長選が始まり、浜松市では市長選とともに、七つの行政区を三つに再編するかを問う住民投票が告示された。大阪で議論されている大阪都構想と形は異なるが、指定市のあり方を問う動きで、市長選、29日告示の市議選でも主な争点になる。浜松市では29日に県議選も告示され、4月7日に四つの投票が行われる。
「(現在の7区は)職員が分散化し、無駄が生じる。それを最適化する」。市長選で4選を目指す鈴木康友氏(61)は第一声で再編の必要性を強調。前市議の山本遼太郎氏(32)=自民県連推薦=は「人口がアンバランスだ」と3区案に反対し、農業の野沢正司氏(69)=共産推薦=は「市民サービスが減る」と再編自体への反対を訴えた。
人口約60万人だった浜松市は11市町村を編入合併して人口約80万人の都市となり、2007年4月に指定市に。旧市町村の意向をくみ、人口約3万~24万人の七つの行政区を設けた。
効率の観点から7区に異を唱えたのが地元経済界の重鎮、鈴木修・スズキ会長だ。修氏が会長を務めた市行財政改革推進審議会は09年、「区を置く必然性はない。制度改正を働きかけるべきだ」と提言した。
修氏の支援を受けて指定市移行直後の07年4月に初当選した鈴木市長も、効率的な組織運営などを目的に区の再編を検討。近年は旧浜松市区域の5区を1区にまとめたうえで必要最小限の2区に減らすことを軸に議会と協議してきたが、最大会派の自民党幹部に慎重派が多く、議論が進展しなかった。自治会連合会が「議会で決められないなら住民投票を」と市と市議会に求め、住民投票が決まった。
市は最大年7億円の経費削減効果があるというが、旧浜北市(現浜北区)などの意向を踏まえた3区案は区の人口に最大20倍以上の開きがあり、「バランスを欠く」との批判もある。
住民投票では、まず3区案への賛否を問い、次に反対の人だけに再編自体への賛否を尋ねる2段階の設問になっている。結果に拘束力はないが、市長と議会は「結果を尊重しなければならない」と条例に記されている。(大島具視)