高知県四万十市の小料理屋「昭和ブギウギ食堂のらくろ」には、5歳の看板娘が過ごす名物の小部屋がある。店の切り盛りに忙しい両親が造った、私的な素敵な「託児所」だ。
届いた匿名の手紙、そして小さな石は四万十川に帰った
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「ただいまあ」。夕方、幼稚園から元気よく帰ってきた小寺コナツちゃんは、自分の部屋に直行する。
両親が働く調理場のすぐ脇がコナツちゃんの「城」だ。カウンターに座ると約3平方メートルの可愛い空間が目に飛び込んでくる。世界地図や絵本、おもちゃ、人形が並ぶ。テレビも置いた。店が終わるまで、勉強したり遊んだりして過ごす。眠くなったら眠る。
常連客は「コナツの部屋」と呼んでいる。コナツちゃんの父の孝治さん(47)は「ミニ託児所ですね」と笑っている。
三重県出身でサーフィンが趣味の孝治さんは海を目当てに2005年に移住してきた。結婚を機に12年に店を始めた。四万十市の繁華街にある店には昭和の歌謡曲が流れ、太平洋でとれた新鮮な魚料理と地酒で人気になった。
1年後にコナツちゃんが生まれた。高知特産のかんきつ類の小夏から名付けた。Iターンの移住者だったので周囲に親類もいなかった。孝治さんと妻の安奈さん(46)は、おんぶしながら料理を作った。
コナツちゃんはすくすく育ち、動き回って目が離せない。生後8カ月のとき、孝治さんは5席のカウンターをつぶし、「コナツの部屋」を造った。
店内で過ごし始めるとたちまち看板娘になった。知っている客が来ると注文を取りに行く。「ありがとうございます」「またきてね」とあいさつする。客からは「元気か」「かわいくなったなあ」と声がかかる。自分の部屋に常連客の子どもたちを呼んで遊ぶ。友だちも増えた。
単身赴任中の会社員はひざに乗せて話しかけながら、自宅に残した娘に思いをはせる。中高年の夫婦は都会にいる孫の顔を重ねる。コナツちゃんはお小遣いをもらうこともある。「洋服もいっぱいもらって。買ったことがないほどです」と母の安奈さん。
常連客の会社員川村知史さん(…