多くの原発を抱える福井県でも、知事選は保守分裂に。構図はともに官僚出身で、県庁でも一緒に仕事をしてきた現職対元副知事。自民の推薦で勢いづいた元副知事で新顔の杉本達治氏(56)が、現職の西川一誠氏(74)の5選阻止を確実にした。
7日午後8時過ぎ、福井市の事務所で杉本氏は支持者と万歳三唱。「県内を歩き、新しいことを常に考えながら、活動していく。何よりも県民が主役の県政に変える」と抱負を語った。
杉本氏は元総務官僚で、旧自治省出身の西川氏は先輩にあたる。県庁では総務部長、副知事として計6年間仕えた。この期間を含め4期16年続いた西川氏の県政。だがその運営が「議会軽視」との不満が県議らの間でくすぶっていた。不満を抱いた一部の自民県議らが、総務省に戻った杉本氏に出馬を要請した。
こうして分裂に至ったものの、杉本氏は政策については西川氏の路線を継承する考えを示してきた。原子力行政についても同様で、廃炉作業中を含めて原発15基が立地する県南部での個人演説会では、「原子力は重要な産業の一つ」と強調。「県民の安全を最優先する」と西川氏と同じ主張を展開した。
「違い」が見えにくい選挙戦だったが、杉本氏は県農政連や県建設業協会など集票力の強い団体から推薦を得て、早期に足場を固めた点が奏功した。
共産新顔の金元幸枝氏(61)はほかの2人と異なり、「脱原発」を掲げたが及ばなかった。