日本が世界に誇るアニメ制作会社、スタジオジブリ(東京都)。設立から30年間にわたる歩みや作品世界を紹介する展覧会が、福岡市の市博物館で開かれている。見どころのひとつが、劇場初公開作品「風の谷のナウシカ」(1984年)に登場する「腐海(ふかい)」の世界を再現した模型だ。
「シン・ゴジラ」のキャラクターデザインを担当した造形作家、竹谷隆之さんの制作で、各地を巡回する中で福岡が初公開だ。巨大生物「王蟲(オーム)」は全長8・5メートル、高さ3・8メートル。14個の目玉は赤や青に輝く。ムカデのように細長く平らな体のヘビケラ、「腐海の見張り番」の大王ヤンマなど、おなじみの蟲たちも。あまりにもリアルで、「これは実在するかも」と思わず考えたくなるほどの出来栄えだ。
いろいろなバージョンのポスターや原画、企画書、各種メディア広告など約3千点も展示する。注目は「制作の裏側を伝える生々しい資料」(青木貴之・イベントプロデューサー)だろう。
例えば、「もののけ姫」(97年)の「生きろ。」といったキャッチコピー。ジブリの鈴木敏夫・代表取締役プロデューサーや宮崎駿監督が、コピーライターの糸井重里さんとの間で「あーでもない、こーでもない」と呻吟(しんぎん)し、やりとりを重ねて考え出した。精魂込めた自信作だからこそ、一人でも多くの人に届けるための宣伝をおろそかにはしない――。壁に貼られた数々のファクスは、そうした強い決意と迫力に満ちている。
もちろん、ネコバスも。ジブリにある本物を模したカウンターでは、トトロが出迎えてくれる。
「ジブリの大博覧会~ナウシカからマーニーまで~」は6月23日まで。月曜休館(4月29日・5月6日は開館、同7日は休館)。一般・大学生1400円、中学・高校生千円、4歳~小学生600円。(小西孝司)