3年前の熊本地震では、酪農が盛んな阿蘇地方も大きな被害を受けました。牛舎が倒れ、子牛を失った牧場主は一時廃業も考えましたが、奮起して再建。今は若い就農者も仲間に加わり、熊本の農業復活の一翼を担っています。
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熊本の街で今、起きていること 歩いて見えた光と影
JR熊本駅から北東へ車で約1時間。なだらかな起伏が続く道路を抜けた山あいにある山田牧場(熊本県西原村)では、牛など計約200頭を育てて生乳を出荷している。
この牧場では古謝政長さん(23)がトラクターを動かしたり、牛にえさをやったりと、忙しく働く。熊本県にキャンパスがある東海大農学部を昨年春に卒業して入った新規就農者だ。大学で学んだことを農業の現場で生かしたいと思い、同県の新規就農支援センターに相談。紹介されたのが山田牧場だったという。毎朝6時半からの作業に、体がきついと感じることも多いが、「牛の目や体をよくみるようになった。体調が悪いと乳の出も悪いですからね」と話す。
その様子を見て、牧場の山田政晴社長(69)は「牧場の頼もしい戦力。若い人の力に助けられている」と喜ぶ。
3年前の熊本地震で牛舎7棟のうち4棟が倒壊、下敷きになった子牛6頭を失った。近くの道路に亀裂が入り、運営するレストランやアイスクリームなどを売る販売店も営業を止めざるを得なかったという。
逆境をバネに生産拡大
約40年前に始めた酪農。壊れた牛舎を前に山田社長の頭にも「廃業」の文字がよぎった。しかし、周辺の酪農仲間が一様に落胆する姿をみて、「この地域で続いた酪農をなくしてはいけない」と逆に奮起した。
復興のために用意された国や自治体の支援や、返済条件を軽くした金融機関の貸付制度は「逆に、事業拡大のチャンスだ」と感じたという。
山田牧場ではその後、牛舎を建…