静岡県の伊豆半島周辺海域で、普段はこの季節に見ることができない種類の魚が多数、観察されている。夏から秋にかけて、黒潮に乗って南方から幼魚が来る「季節来遊魚」だ。例年は海水温が下がる2月から3月にかけて死滅するため「死滅回遊魚」とも呼ばれているが、今年は海水温が下がらず、4月になっても生き延びている。
2日、同県松崎町雲見の駿河湾に、地元ガイドの糸井泰久さん(54)の案内で写真家の堀口和重さん(32)と潜った。水深20メートル、水温は17度。まず見つけたのは紅白の彩りが鮮やかなクマドリカエルアンコウ。体長3センチほどの幼魚だ。続いてチェック模様が特徴のクダゴンベ、さらにアマミスズメダイ、キツネベラ、セナキルリスズメダイ、ミツボシクロスズメダイ……。
糸井さんによると、11月ごろにやってきた幼魚がそのまま生息しているという。1990年から伊豆の海に潜り続けている糸井さんだが、「南方種が越冬するのを見たのは初めて」と話す。伊豆では例年、海水温が14度前後となるが、今年は多くの場所で16度程度までしか下がらなかった。春になっても生き残っている死滅回遊魚は駿河湾の他の場所でも見られ、一方で海藻の生育が悪いという。
東海大海洋学部の轡田(くつわ…