熊本市北区植木町周辺で、出荷前のスイカが大量に盗まれている。把握されているだけで、約500玉が被害に遭っているといい、大切に育ててきた農家からは怒りと悲しみの声が聞こえてくる。
JA鹿本によると、熊本市北区植木町周辺の3カ所で、4月中旬に約500玉のスイカが盗まれた。多いところでは1農家あたり330玉がなくなった。多くは1玉7~8キロの大玉の品種で、全てビニールハウスで育てられていたという。
以前から盗難は報告されていたが、これほど大がかりに盗まれたことはないという。営農指導課の堀勝博(まさひろ)さん(35)は、「トラックがないととれない量。計画性を感じるのが、脅威だ」と話した。
植木町平野の農家永井利友(のりとも)さん(53)は、ビニールハウス1棟から150玉のスイカを盗まれた。20日午前8時ごろ、ハウスを見に行った父親が、スイカがなくなっていることに気がついた。別の作業をしていた永井さんも駆けつけると、ハウスの入り口から20メートルほどの範囲に、はさみで切り取られたあとがあった。
「鳥肌がたった」と永井さんはそのときの衝撃を振り返る。葉やつるは踏みつけられ、折れたり切れたりしていた。入り口と反対側のビニールは、逃げ道を作ろうとしたのか、十字に切られて人が通れるようになっていた。
4月中旬から5月の初めはスイカの糖度が高く、ゴールデンウィークは消費が活発になる。出荷すれば1玉2500円ほどで売れた。ただ、永井さんは「お金よりも、悪いことをしたと反省してほしい」と話す。11月の終わりの種まきから始め、1月に定植し、5カ月間手塩にかけて育ててきた。「子どもを育てるのと、一緒だけんね」
警察署に被害を報告し、警察官が付近を巡回しているというが、逮捕したという知らせはまだ来ない。「悔しいよ。動物ならまだしも、人間がやるのは許せん」(杉山歩)