国の特別天然記念物ライチョウが長野・岐阜県境の乗鞍岳で、繁殖期を迎えている。
雪解けが始まった乗鞍岳の標高2500メートル以上の高山帯。真っ白い冬羽の首筋付近に黒い羽根が交じったオスが、縄張りをめぐり岩の上や高さ約30センチのハイマツなどに紛れ、周りを警戒していた。ほかのオスが近づくと、羽を広げ飛びかかって追い出していた。
つがいとなったライチョウは、5月下旬にメスが産卵を始め、6月下旬ごろからひなが孵化(ふか)する。7月には、運が良ければ、ひなを連れて歩きまわるライチョウの親子の姿を登山道からでも観察できる。
保護活動を行ってきた中村浩志・信州大名誉教授によると、ライチョウの数は1980年代には約3千羽いたが、現在は約1700羽までその数を減らしているという。環境省の「レッドリスト」で、近い将来絶滅する可能性が高いⅠB類に指定されている。(杉本康弘)