イランのロハニ大統領は8日、国営テレビを通じて演説し、昨年5月に米国が核合意から離脱したことへの報復措置として、核合意の履行を一部停止すると宣言した。ロハニ師は核合意にはとどまる姿勢を示す一方で、欧州などとの交渉がうまく進まなければ、本格的な核開発を再開するとも表明。敵対するトランプ政権だけでなく、国際社会からの強い反発を招く恐れがある。
ロハニ師はこの日の演説で、「米国が最初に核合意に違反した。報復措置として履行の度合いを減らすが、離脱はしない」と述べ、核合意で定められていた濃縮ウランと重水の保有量の制限を順守しない意向を表明。さらに、英仏独などの関係国と交渉するとしているが、「60日間で原油取引などの問題で交渉がうまくいかなければ、ウランの濃縮率の制限も履行しない」として、核合意では停止されていた高濃縮ウランの生産などを再開すると警告した。
イランは核合意にとどまる意向だが、英仏独などとの交渉次第では、核合意の枠組みが崩壊しかねない。イランが核開発を再開させれば、敵対するサウジアラビアなども核開発に着手して、中東で「核ドミノ」が起きかねないとの懸念もある。
核合意は2015年、イランと欧米などが締結した。イランが15年間、核兵器に転用できる高濃縮ウランや兵器級プルトニウムを製造せず、貯蔵濃縮ウランや遠心分離機を削減する見返りとして、欧米などが対イラン制裁を緩和する内容だった。だが、トランプ米政権が昨年5月に離脱し、原油禁輸などの制裁を再開していた。(テヘラン=杉崎慎弥)