憲法改正の賛否を問う国民投票の際に政党などが流すCMについて、日本民間放送連盟が賛成と反対のCM量を均衡させるための自主規制はしないと決めたことで懸念が広がっている。特定の勢力のCMが多く流れて世論が誘導される恐れがあるとして、なんらかの規制を求める声が国会でも出ている。
主権者が冷静に考える時間を確保するため、投票前の14日間は賛否の投票を直接促すテレビとラジオのCMを国民投票法が禁じている。この期間は、意見表明のためのCMも自主規制として流さないことを民放連が決めている。だがそれ以前の期間はこうした規制はないのが現状だ。
民放連は無策なわけではないと主張する。3月にガイドラインを作成して公表。放送事業者の意見と混同されぬよう、ニュースの中、直前、直後を避けてCMを放送する▽視聴者の心情に過度に訴えかけることで、冷静な判断を損なわせ、事実と異なる印象を与えると放送事業者が判断するCMは流さない――などを明記した。「特定の広告主のCMが一部の時間帯に集中して放送されないよう留意する」とし、実質的な量的規制と取れる記述も盛り込んだ。「政治的に公正な立場を守る」などの目的で日常的に行っているCMチェックの延長だが、国民投票という未知のイベントに備えて、改めて取り決めを作ったという。
9日の衆院憲法審査会で民放連の担当者は「特定の広告主にCM枠のほとんど全部が買い占められるというようなことは想定できない」とも述べた。国民投票のような期間限定のCMは、個別の番組へ提供する「タイム」枠ではなく、番組の合間に時間帯を指定して入れる「スポット」枠で流すのが一般的。基本的に早い者勝ちで広告主が決まる。「通常は2、3カ月前にセールスが始まるが、早ければその時点で枠が埋まるほど、他の広告主との競合要素が大きい」(大手広告会社幹部)からだ。
放送業界にはそもそも賛否のC…