噴火警戒レベルが引き上げられた箱根山では19日、噴気が上がる大涌谷周辺の立ち入りが規制され、箱根ロープウェイが全線運休となった。規制は箱根山のごく一部にとどまるが、周辺の観光地では今後の客足への影響を心配する声も聞かれた。
箱根山の噴火警戒レベル2に 大涌谷園地の立ち入り禁止
箱根町総合観光案内所にはこの日、「安全に旅行ができるか」などの問い合わせが相次いだ。立ち入りが規制されているのは大涌谷周辺に限られており、担当者は「行政が出す情報を正確に伝えています」と話す。
大涌谷から数キロの「箱根ガラスの森美術館」には数件の問い合わせがあったが、来館者の数は普段通りという。岩田正崔(まさたか)館長は「皆さんは冷静に状況を見ている。正確な情報をもとに判断していただければ」。
近くの強羅や湯本といった観光スポットは普段と変わらぬ様子だった。箱根登山電車の終点である強羅駅は、19日も国内外の観光客でにぎわった。
大阪府八尾市の女性(49)は前日に友人と強羅に宿泊。大涌谷を回る予定だったが立ち入りが規制されたため、強羅公園などを散策して帰ることにした。「残念ですね。大阪から来たのでなかなか来られない。また来なきゃなと思います。自然相手だししょうがないですね」
金沢市の女性(84)は、ホテルで「大丈夫」と説明を受け、美術館巡りを楽しむという。「4年前も大変だったでしょ。大きなことが起きなければ良いですね」と、冷静に受け止めていた。
大涌谷に向かう箱根ロープウェイの桃源台駅では、切符売り場などに代替交通のルートを知らせる紙が貼られ、係員が観光客への案内に追われていた。
京都市左京区の女性は「黒たまごを買って、噴気でぼこぼこしている景色と富士山を見たかった」と残念そう。「もみじが新緑で芦ノ湖に映え、つつじも咲いていてイメージ以上のすてきなところでした。大涌谷に行けず残念だけど、食事や温泉を堪能しようと思います」と話していた。
箱根山をめぐっては、2015年にも火山性地震が続き、噴火警戒レベルが一時は3まで引き上げられた。宿泊客や乗客が3~4割減るなど、客足に大きな影響が出た。
タクシー運転手の石井忠孝さん(49)は「さらに警戒レベルが上がると商売に影響する。1に下がるか、2のままにとどまってくれれば」と心配そうな様子だった。
箱根町観光課によると、箱根ロープウェイを除く、登山電車やケーブルカー、駒ケ岳ロープウェー、路線バスなどは平常通り運行している。大半の宿泊施設や観光施設も平常通りの営業という。(山下寛久、斎藤茂洋)