シンギュラリティーにっぽん
人工知能(AI)が雇用を奪う、との心配が広がる。テクノロジーが脅威になるとき「公的な支え」が必要にならないのか。個人はどう備えればいいのだろうか。(牛尾梓=ハミルトン、編集委員・堀篭俊材)
政権交代で泡と消えたユートピア
白い煙をはき出す製鉄所の煙突群が見える。五大湖のひとつ、オンタリオ湖沿いに広がるカナダ・ハミルトン。低所得者が多い労働者の街で、元銀行員のジェームズ・コルーラさん(29)は途方に暮れている。
「お金をどう工面しようか。生きていくために、そればかり考えている」
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AIが生む?「バーチャルスラム」の危険
ハミルトンがあるオンタリオ州政府は2017年7月、仕事の有無にかかわらず低所得者に一定額のお金を支給する最低所得保障制度「ベーシックインカム(BI)」の実験を開始。コルーラさんは月約900カナダドル(約7万3千円)を受けていたが、これが3月、突然打ち切られた。
大学を出て5年間、地元の銀行…