リニア中央新幹線の静岡工区(11キロ)が未着工のため、2027年度の開業予定時期に遅れが出るとの懸念が他県の知事やJR東海の金子慎社長から相次いだことについて、川勝平太静岡県知事は11日の定例会見で「我々が遅らせているとみるのはフェアじゃない。自分の立てた計画を金科玉条のごとく相手に押しつけるのは無礼千万」とJR東海を批判した。
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JR東海の金子社長は先月30日の会見で「未着工の状態が続けば開業の時期に影響を及ぼしかねない」と発言。今月6日に開かれた沿線9都府県によるリニア中央新幹線建設促進期成同盟会でも、他県の知事らから「未着工区間をなんとかしてほしい」との声が相次いだ。愛知県の大村秀章知事は10日の会見で「JR東海と静岡県だけの協議ではなく、国が前面に出て調整し、事業を前に進めていく責任がある」と述べた。
川勝知事は工事で重金属が出たり、水漏れや軟弱地盤にぶつかったりして開通が遅れた中部横断自動車道を引き合いに、「開業はさまざまな理由で遅れ得る。早まることはない。1~2年遅れてもダメだということにはならないだろう」と述べた。
また、静岡県が期成同盟会への入会を希望した理由について「同盟会は圧力団体。途中駅は作らないはずが、同盟会の要求で1県1駅となり、建設費もJR東海が全額負担する。ところが、静岡の利益は皆無だ」と述べ、「水の量、質、土砂の管理、(自然環境破壊への)代償措置。生態系がやられるんだから数百万円ではすまない。他県で地元の要求に応じて駅を作った費用の平均ぐらいが額としては目安になる」とJR東海に具体的な補償を求めていく考えを示した。
そのうえで、「もし同盟会に静岡県を入れないということであればルートから外してほしい。急がば回れだ」と主張した。同盟会入りがかなえば、県とJR東海のこれまでの協議内容などについて資料を公開し、他の都府県に理解を求めていく意向も示した。(阿久沢悦子)