先進国が「長期停滞」に陥り、格差は縮まらず、賃金や物価も上がりにくい。金利を低く抑える金融緩和は限界で、政府がさらに財政出動すべきだ――そんな論調が勢いを増している。各国に財政再建を求めてきた国際通貨基金(IMF)でチーフエコノミストを務めた、オリビエ・ブランシャール氏もそうした論者の一人だ。かつて在籍したIMFとは大きく異なる論を唱える背景は何なのか。
財務省の主張はウソか 異端理論「MMT」上陸で激論
「とても、とても危険だ」 前欧州中銀総裁がMMT語る
ブランシャール氏は朝日新聞の取材に応じ、安倍政権が10月に予定する消費増税に反対する姿勢を示した。「消費増税を実施すれば不況になるかもしれない一方、債務残高の国内総生産(GDP)に対する比率は大して改善しない。日本銀行の金融政策ももう使えない」と指摘。「日本経済が十分に強いと言えるなら、(増税で)歳入を増やしたり、歳出を削減したりできるだろうが、私は当面はその時期ではないと思う」との見方を示した上で、「私なら期限を定めず延期して、『引き上げられる時期が来たら直ちに引き上げる』と言うだろう」と述べた。
長期停滞の要因でもある少子化を食い止めるため、子育て支援などの対策に財政支出を進めるべきだとも主張した。財政支出が正当化される理由として「今後も長い間、長期金利は名目成長率を下回り続ける」と指摘。この条件が満たされる限りは、債務のGDP比は大きく悪化しないためだが、日本の財務省は「名目成長率が長期金利を上回る状況が持続する保証はない」との立場に立つ。
ブランシャール氏は「ただ財政…