投資が失敗続きの官民ファンド「農林漁業成長産業化支援機構(A―FIVE)」について、所管する農林水産省は役員の報酬や退職慰労金に業績連動の仕組みを導入する方針を固めた。今は運用成績に関係なく全て固定額で支払っているが、結果責任を問う仕組みにしなければ国民の理解を得られないと判断した。
A―FIVEは2013年1月に設立。大半を政府が出資した319億円の資金を元手に株式を購入するなどして企業を支援しているが、投資先の業績不振が相次ぎ、今年3月末時点で累積赤字92億円を抱える。
だが、A―FIVEの規定では役員報酬に業績連動分はなく、全額固定額をもらえる。常勤役員(今年3月末時点では3人)の報酬は年2千万円ほどで、退職慰労金にも業績連動がない。約6億5千万円を投融資した企業が経営破綻(はたん)した案件に深く関わった大手銀行出身の専務にも、今月下旬に退任する際に6年間の勤務分の退職慰労金1400万円を満額支払う予定だ。金融業界からは「結果重視のファンドの世界ではありえない報酬体系だ」との批判があがっている。
この報酬体系について、吉川貴盛農水相は18日の閣議後の記者会見で「見直すべきかは、まずはA―FIVEで検討されるべきことと考えているが、農水省としても必要に応じて指導、助言をしていかなければならない」と述べた。役員報酬や退職慰労金の自主返納については「そういったこともしっかりと指導していく」と話した。
関係者によると、農水省はA―FIVEと業績連動の導入に向けた検討に着手した。今後、具体的な仕組みや報酬全体に占める業績連動分の割合などを詰め、年内にも新制度を導入する考えという。農水省の首脳は取材に対し、巨額の赤字を抱えながら役員が報酬を全額もらっていることについて「国民の怒りは当然だ」と話した。(大日向寛文)