理容師が遺族の依頼を受け、故人の髪を整える「エンディングカット」。三重県東員町の小さな理容店が始めたサービスが、徐々に広がっている。「亡くなった方を少しでもきれいな姿で見ていただき、悔いなくお見送りをしてほしい」。そんな思いで、故人と遺族らとの“最後の時間”を良い思い出にしようと手助けしている。
「髪の毛一つで、印象がガラッと変わります」。東員町笹尾西2丁目で「エンディングCutピュア」を営む小山辰己さん(59)はそう話す。「ご遺体は寝た状態なので、普通はほとんどオールバックの状態になり、生前の印象とズレがあるケースが多いんです」
生前の写真や遺族の話を元に髪形を決める。寝たままの姿で髪を切り、シャンプー、白髪染めなどを施してセットする。カラー染めをしたり、爪にネイルを施したりすることもある。仕上がった姿を見ると、ほとんどの遺族が涙を流すという。
小山さんがエンディングカットを始めるきっかけとなったのは、2009年、妻の加代さん(54)の父親が亡くなった時だった。伸びていた髪を、本来の短髪に整えた。棺から見える姿が見違えるようになった。「自分の技術が使えるのではないか」。そう考えて始めたという。
やはり最後のカットだという点に気を払う。「失敗は絶対に出来ないですから、すごく神経を使います」。
寝ながら髪を切るのは、起きて…