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豪雪地帯でバナナよ実れ フルーツにかける社長の思い

「みんなと同じものを作っていてはダメだ」――。そんな思いから、秋田県美郷町の食品加工会社がバナナやパパイアなどの南国果樹の栽培に取り組んでいる。豪雪地帯の冬も乗り越え、今秋にも収穫を見込んでいる。


美郷町の田地に立つ高さ8メートルのビニールハウス。20度以上に保たれた室内には、バナナやパパイア、グアバの木が計100本以上並ぶ。昨秋には90センチだったバナナの苗は、今や4メートル超に成長した。


「幹の太さから、今月中にも花が咲きそうだ」と、栽培者である秋田食産の佐藤良一社長(58)は目尻を下げる。


いぶりがっこを製造する同社は、2014年の創業。町内でダイコンやニンジン、薬草を栽培している。採算性を上げるため、コメやネギといった主要農産物とは違う作物づくりで差別化を目指す中で、埼玉県でバナナが作られていると知った。


「おもしろそうだ」。そのバナナ栽培の現場に足を運んだほか、1年かけて、広島や岡山など全国の南国果樹栽培を見学した。昨年10月に岡山市の農業法人から、パイナップルとコーヒー(ブルーマウンテン)を合わせた、耐寒性のある計5種の苗を購入し、栽培に乗り出した。


苗は3棟のビニールハウスに分けて植えた。例年11月中旬から雪が降り始め、周囲は2メートルほどの積雪がある。だが、室温は17度以上を保った。「17度ならば、冬採りのイチゴとかかる経費が変わらないんです」


春を迎え、コーヒーは赤い実を、グアバは緑の実をつけ始めた。だが栽培はまだ手探り。佐藤社長が頭を悩ませているのは、カビの原因にもなる「湿度」で、栽培方法を模索している。


県園芸振興課によると、これまで県内での南国果樹の栽培実績はないという。佐藤社長は将来的に栽培果樹を絞った上で、「ビジネスとして確立させ、町の特産にもしたい」と話す。(神野勇人)


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