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長髪男子が2年ぶりに髪を切った。小児がんなどで髪を失った子たちに自分の髪の毛をウィッグとして寄付するヘアドネーション。群馬県太田市の私立小中高一貫校ぐんま国際アカデミー(GKA)の文化祭で29日、高等部2年の住谷岳海(たけみ)さん(16)が男子として初めて「断髪式」に臨み、ヘアドネーションに関わる女子高生たちが交代で髪にハサミを入れた。
ウィッグ支援「俺もやる」 男子高生は、ロン毛になった
「女子高生ヘアドネーション同好会」は、高2の伊谷野友里愛さん(17)と、大学生になった姉の真莉愛さん(18)が2017年春に創設。これまでに800人以上から髪の寄付を受け、小児がんの5人にウィッグを提供してきた。
住谷さんが活動を知ったのは17年7月。「男子がやったら面白そう」と興味半分で始めたが、生徒らが撮ったヘアドネーションのドキュメンタリーを見て本気になった。贈られたウィッグを付け、「フツーに女の子だ」と感嘆の声を上げる少女の映像に衝撃を受けた。
住谷さんは、20~27日に中国・北京であったディベートなどを競う「ワールド・スカラーズ・カップ」に参加してきたばかり。約50カ国の高校生3千人超が集った大会でも注目され、「あなたの髪が好き」「日本のサムライ」と人気者に。「闘病中の子に贈るんだ」と説明すると、「すげえ」と驚かれた。フィンランドの女子高生は「私もやろう」と目を輝かせた。
29日の断髪式は、多くの見物客を前に屋外でおこなわれた。ウィッグには十分過ぎる40センチ超に伸びた住谷さんの髪に、友里愛さんがまずハサミを入れた。同好会を創設した姉の真莉愛さんや教師も加わり5人が後に続いた。約30分後、短髪になった自分を鏡で見て、「これはだれだ」と住谷さん。見物客からは拍手と歓声が上がった。
「三つ編み以外にもいろんな髪形を試したかった。それが心残り」と前日まで寂しさを隠さなかった住谷さんだが、短髪の頭に手をやり「これもなかなか捨てがたい」。ウィッグ一つに30人分の髪が必要で、住谷さんが2年がかりで手入れしながら伸ばした髪も、30分の1に過ぎない。「でも欠かせない1ピース。ウィッグを心待ちにしている子どもたちのため、今からまた髪を伸ばします」(長田寿夫)