イヌは祖先とされるオオカミと違い、目の周りの筋肉を動かして上目遣いの悲しげな表情を浮かべられるようになった――。そんな研究結果を英ポーツマス大学などのチームが発表した。人間の暮らしに身近な存在ならではの理由があるという。
研究チームによると、イヌは3万3千年前から人間と一緒に暮らしていたことが知られている。そのなかで行動や体がどう変化したかを知るために、英国で飼い主がおらずシェルターに保護されたイヌ27匹と、イヌの原種で動物園に飼われているハイイロオオカミ9匹を比べた。
すると、遺伝的にオオカミに近いシベリアンハスキーを除くと、イヌは人間が近づいたときに、眉の内側を引き上げて上目遣いの悲しげな表情を見せることが顕著に多かった。目の周りの特定の筋肉の発達により、この表情ができるという。
また、イヌのなかでも、この表情を頻繁に浮かべる方が、引き取り手が早く見つかる傾向があったという。研究チームは「眉を引き上げると目がより大きく見えて子犬のような目に見せる効果がある。保護欲をそそるだけでなく、人間がよりコミュニケーションを取りやすいと感じるようだ」としている。
研究成果は、6月17日付米科学アカデミー紀要(
https://doi.org/10.1073/pnas.1820653116
)に掲載された。(杉本崇)