豪雨時の人命救助に対応する態勢を強化するため、総務省消防庁は今年度から、水陸両用など特殊車両を備えた部隊の配備を全国で始めた。近年、土砂崩れなどの多発で、救助要請の現場にたどり着けないケースが生じていた。
各地の消防組織はおもに、平時に起きる火災や交通事故などを想定した人員や装備を整えている。だが、2017年の九州北部豪雨や18年の西日本豪雨などの大規模な災害時には、住民から救助要請を受けても、多発した土砂崩れや河川の氾濫(はんらん)で足止めされたり、人手が足りずに現場に到着できなかったりする状況が起きていた。
こうした事態に対応するため、総務省消防庁は4月から、全国の県庁所在地の消防局などに「土砂・風水害機動支援部隊」と名付けた部隊の配備を始めた。
部隊は、土砂や流木を撤去できるショベルカー、道路が寸断されても活動できる水陸両用車両、バギーやボートを積むなどの特殊車両と20人ほどの隊員で編成。このうち少なくとも1種類の特殊車両が配備されれば運用を始めており、今月1日までに全国34都道府県で運用されている。
これまでも、大規模な消防組織は特殊車両を備えていたが、各地で豪雨災害が頻発しているため全国一律に配備することにした。当面は各県に1部隊以上、全国で約50部隊をめざす。
各県に配備された特殊車両や県内の消防機関だけでは対応しきれない場合に、近隣県の「土砂・風水害機動支援部隊」が応援で派遣される。
同庁の担当者は「近年多発する大規模災害は、地元の消防組織の能力を超えてしまっていた。一件でも多く、速く救助に向かえる態勢を整えたい」と話す。(竹野内崇宏)