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大相撲 大の里 横綱昇進確実 初土俵から13場所での昇進は最速

大相撲夏場所で大関として2場所連続優勝を果たした大の里について、日本相撲協会は横綱昇進に向けた臨時理事会の開催を決め、大の里の横綱昇進が確実になりました。
初土俵から所要13場所での昇進は横綱が番付上の地位として明文化された明治42年以降、最も速い記録となります。

今場所、綱とりに挑んでいた大の里は初日から連勝を続け、自身最長となる13連勝とし、13日目に自身4回目、大関としては2場所連続の優勝を果たしました。

千秋楽に横綱 豊昇龍に敗れたものの最終的には14勝1敗の好成績を残しました。

横綱昇進の議論を預かる日本相撲協会の審判部は、八角理事長に対し大の里の横綱昇進に向けた臨時理事会の開催を要請し、理事長は開催を決めました。

相撲協会は、今月28日の臨時理事会に先立ち、26日の横綱審議委員会に大の里の横綱昇進を諮問します。

横綱審議委員会には、横綱に推薦する条件として「大関で2場所連続優勝かこれに準ずる成績」という内規があり、過去に2場所連続優勝した力士が横綱に昇進できなかった例はなく大の里の横綱昇進が確実になりました。

初土俵から所要13場所での横綱昇進は、横綱が番付上の地位として明文化された明治42年以降、最も速い記録となります。

大の里「来場所も大事な場所になる」

 

2場所連続の優勝を果たした大関 大の里は「最後は負けてしまったが、本当にうれしい。全勝優勝したかったが、かなわなかったので、また次頑張りたい」と話しました。

初めて「綱とり」に挑んだ心境については「場所前に少し体調不良があって調整不足のため不安もあったが、親方のことを信じてやっていけたのでよかった。重圧がないといったらうそになるが、先月の巡業で『綱とり』とか『横綱』という声をたくさんかけてもらった分、耳が慣れて、場所中は何も考えずに挑むことができた」と振り返りました。

今場所の相撲内容については「最初の5日間が大事だと思っていて、そこがよかったので、いい流れを作ることができて白星につながったと思う。中盤戦以降も落ち着いて相撲を取ることができたし、自分のよさがたくさん発揮できてよかった」と手応えを口にしました。

また、地元の石川に向けては「地元の巡業でたくさん声援を頂いたので、優勝を届けることができて本当によかった」と話しました。

最後に、横綱昇進が確実になったことについては「臨時理事会が開かれる水曜日にいい知らせが聞けるように待ちたい。来場所も大事な場所になってくると思うので、しっかりと準備をして、いい場所を過ごせるように頑張りたい」と述べました。

二所ノ関親方「まだまだ進化途中」

師匠で元横綱 稀勢の里の二所ノ関親方は「一気に1週間で仕上げたが、いい仕上がりになって、初日から体も張っていたし、よかった。序盤5日間の入りがよくて、先場所負けた相手に一気に前半で当たって流れをつかんだ。一日一日の集中力があったし、立ち合い集中できていないのは、今場所は一番くらいで修正できていて、その結果が出た」と振り返りました。

横綱昇進が確実になったことについては「まだまだ進化途中で、これで終わりではない。きょうの千秋楽での負けを今後の人生においてプラスにして、この負けがあるから今の自分があると何年か先に言えるような力士になってほしい。横綱が稽古終わりにしこを踏んで、一生懸命稽古する姿も必要で、それに引っ張られる若手もたくさんいるので、相乗効果で相撲界を盛り上げるように稽古してほしい」と期待を寄せました。

そのうえで「もっとしっかり自力をつけて威力を増して、体の芯の強さが必要で、根こそぎ持っていくくらいの力も必要になる。お祝いムードも1週間くらいにして、名古屋に向けてまたしっかり稽古をつけていきたい」とさらなる奮起を促しました。

八角理事長 “安定感も伸びしろも感じる”

日本相撲協会の八角理事長は、横綱昇進を確実にした大の里について「立ち合いで慌てることが少なくなった。踏み込みさえすれば、相手は押せない。そして、相手を見ながら突っ込んでくる相手には、見て受けてから前に出る。ここの安定感が出てきたが伸びしろも感じる」と評価しました。

千秋楽の結びの一番については「もう何回か突いて、相手との距離を離したかった。全勝は難しい」と話していました。

そして、横綱昇進が確実な来場所以降について「口で引っ張るのではなく、稽古をしている姿を率先して見せて引っ張ってもらいたい。豊昇龍とともに、2人の名前を取った時代をつくってほしい」と期待していました。

高田川審判部長 “満場一致 強かった”

日本相撲協会の高田川審判部長は、大関 大の里の横綱昇進に向けた臨時理事会の招集を要請したことについて「満場一致だった」としたうえ「言うことはないと思う。強かったのひとことだ。きょうは負けたが、来場所が楽しみ」と評価しました。

そのうえで「強い大の里を見せてくれればいい。前に出て圧倒的な力でねじ伏せる横綱になってくれると思う」と期待を寄せました。

中学・高校時代の恩師 “国民に愛される横綱に”

新潟県糸魚川市にある県立海洋高校で、中学・高校時代の大の里を指導した相撲部の田海哲也総監督は「まだ、頭が整理できていないが立派だ。花道で堂々としていたし、成長した。初日からのスタートが鬼門だと思っていたが、淡々と自分の相撲を取っていた」と振り返りました。

そのうえで「横綱になれば勝って当たり前で、すべて厳しく見られるし、生活面でも品格を持たないといけない。大変な立場になるが、彼の場合は立場が性格を作るので、国民に愛される横綱になると思う」と期待を寄せました。

13場所での昇進は明治42年以降 最速

 

学生出身で、幕下付け出しでデビューした大の里は初土俵から所要13場所での横綱昇進となり横綱が番付上の地位として明文化された明治42年以降では最も速い記録です。

現在と同じ、年6場所制が定着した昭和33年以降で比べても同じ石川県出身で幕下付け出しでデビューした輪島の21場所、朝青龍の25場所、曙の30場所を大きく更新します。

さらに、新入幕から所要9場所での横綱昇進は、同じく昭和33年以降では昭和の大横綱 大鵬の11場所を抜いて最も速い記録となります。

また、日本出身の横綱が誕生すれば師匠でもある元横綱 稀勢の里の二所ノ関親方が平成29年の初場所後に昇進して以来、8年ぶりです。

稀勢の里が平成31年の初場所で引退して以降は6年間、日本出身横綱が不在でしたが、その稀勢の里の弟子である大の里が師匠に続く日本出身横綱となります。

また、学生出身の力士が横綱に昇進するのは輪島以来、2人目です。

石川県出身の横綱の誕生は輪島以来、52年ぶり3人目です。

“唯一無二”のスタイルを確立

 

初土俵から所要13場所と最速での横綱昇進を確実にした大の里。

大関昇進の口上で述べた“唯一無二”のスタイルを確立し、番付最高位まで上り詰めることになります。

「大関の地位を汚さぬよう唯一無二の力士を目指し相撲道に精進します」

今場所の大の里が見せたのは大関昇進の伝達式で述べた力強い口上どおりのまさに“唯一無二”といえる相撲スタイルでした。

今場所の初日、先場所敗れた若元春との一番では立ち合い、もろ手突きでいくと、そのまま右を差して左のおっつけも使うこれまで得意としてきた形で寄り切りました。

大関昇進を決めた去年の秋場所からつくり上げてきた自身の型ともいえる攻めでしたが今場所、それ以上に際立ったのが圧倒的な馬力でした。

今場所前の測定ではこれまでより8キロ増えた191キロと幕内では最重量になり、「体重も太ったけど動けるし、3、4キロくらい落ちてきて体も変わってきている」と大きくなった体を稽古で追い込んで絞りながら調整してきました。

3日目の阿炎との一番では立ち合いから相手ののど輪で大きく上体を起こされ土俵際まで追い込まれましたが相手の手が離れた瞬間に差さっていた右で抱えるようにして一気に前に攻めて「送り出し」。

6日目の豪ノ山戦では右を差し切れませんでしたが、相手の突き押しをものともせずかまわず前に攻めて「押し出し」。

13日目、優勝がかかる大関 琴櫻との一番では相手の立ち合いを受けるように胸で当たっていきましたが、全く下がることなく得意の形に持ち込んで「寄り切り」。

相手の攻めを十分に受けた上で、攻める、まさに「横綱相撲」といえる内容で優勝を決めました。

右差し、左のおっつけに加えて、大きな体を生かした圧倒的な馬力を武器にした“唯一無二”の相撲で初めての挑戦で横綱昇進をたぐり寄せました。

そして、もう1つ、“唯一無二”といえるのが昇進のスピードです。

初土俵から所要13場所での横綱昇進は横綱が番付上の地位として明文化された明治42年以降では最も速い記録です。

現在と同じ今の年6場所制が定着した昭和33年以降で見ても、初土俵から横綱昇進までのスピードは同じ学生出身の幕下付け出しでデビューした輪島の21場所など、歴代の横綱を大きく上回ります。

去年の初場所の新入幕からでも所要9場所での横綱昇進となり、同じく昭和33年以降では昭和の大横綱 大鵬の11場所も上回っています。

これまでも数々のスピード記録をうち立ててきましたが、番付最高位への到達も圧倒的なスピードで達成しました。

大関昇進の伝達式後の会見で「ほかに類を見ない、もうこのような人は現れないというぐらいのお相撲さんになりたい」と口上に込めた思いを語っていた大の里。

自身の口上どおりに“唯一無二”の相撲と記録で横綱昇進を確実にしました。

大の里とは

 

大の里は石川県津幡町出身の24歳。

身長1メートル92センチ、体重191キロの恵まれた体を生かして圧力をかけ、右を差しながら左のおっつけもつかって前に攻める相撲が持ち味です。

小学校を卒業後、新潟県糸魚川市に“相撲留学”し、朝早くから夜遅くにまで及ぶ稽古で、多いときには1日100番以上相撲を取るなど高校までの6年間、厳しい稽古に励みました。

相撲の強豪、日体大に進学後は2年連続で「アマチュア横綱」に輝くなど、数々のタイトルを獲得し、大学卒業後のおととし5月の夏場所で幕下10枚目格付け出しとして初土俵を踏みました。

その後、おととしの秋場所で新十両への昇進を果たすと、力強い立ち合いから大きな体を生かした前に攻める相撲を持ち味に2場所続けて12勝3敗のふた桁勝利を挙げ、去年の初場所で新入幕を果たしました。

初土俵から4場所での新入幕は、昭和以降では3番目に並ぶスピード出世でした。

そして去年の春場所では千秋楽まで優勝争いに加わると、続く夏場所では初日に横綱 照ノ富士から初白星を挙げるなど勝利を重ね、12勝3敗の成績で初優勝を果たしました。

初土俵から7場所目での優勝は幕下付け出しの力士としては元横綱 輪島の15場所目より早い、最も速い記録でした。

さらに去年の秋場所で13勝2敗の成績で2場所ぶり2回目の優勝を果たし、場所後に大関に昇進しました。

初土俵から所要9場所での大関昇進は昭和以降では最も速い記録です。

大関昇進後の2場所は優勝争いに絡むことができませんでしたが、ことしの春場所で12勝3敗でならんだ高安との優勝決定戦を制し、自身3回目、大関として初めての優勝を果たし今場所で初めての綱とりに挑んでいました。

そして、今場所は13日目に自身4回目、大関として2場所連続の優勝を決めていました。

横綱昇進までの流れ

大の里の横綱昇進までの今後の流れです。

横綱昇進に向けた臨時理事会の開催が決まり、日本相撲協会は大の里が横綱として実力や品格がふさわしいかどうか審議する横綱審議委員会に横綱昇進を諮問します。

この横綱審議委員会は千秋楽翌日の26日に開かれます。

横綱審議委員会には、横綱に推薦する条件として「大関で2場所連続優勝かこれに準ずる成績」という内規があり、過去に2場所連続優勝した力士が横綱に昇進できなかった例はありません。

横綱に推薦された場合、日本相撲協会は、今月28日に番付編成会議と臨時の理事会を開き、大の里の横綱昇進を正式に決定し大の里が所属する二所ノ関部屋に使者を派遣して、横綱昇進を伝えます。

伝達式では、大の里がどのような言葉で使者にこたえるかその口上が注目されます。

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