子どもたちが、保育園から病気をもらってくることはよくある。それは家族を一巡して(なぜかいつも最後は母親の番なのだが)やっと終わったかと思ったら、子どもは次の病気をもらってくる。私の子どもたちが通っている保育園では、病気の子が出ると、掲示板に「○×病、発生」との書き込みがある。そこに先日、「ぎょう虫巡回中」との書き込みがあった。
えっ! ぎょう虫ですか? そういえば私が小学生の頃、ぎょう虫検査というのがあった(今でもあるのだろうか?)。ダーツの的のような模様が書いてあるシールを朝起きたときにお尻にはって、ぎょう虫の卵がついてるかどうか見る検査だ。シールを入れる袋に、キューピーちゃんのような人形が描いてあった記憶がある。
あれだ、あれ。でも幸い(?)にして、私と弟はその検査にひっかかったことはなかった。だけど、あれにスウェーデンでお目にかかるとは。「あら、保育園ではよくあるのよ」とは、小学校で保健の先生をしている近所のお母さん仲間のコメントだ。「ぎょう虫は薬局で市販されてる薬で退治できるんだけど、もっとやっかいなのはしらみよね」。
えええっ! しらみですか? この検査はさすがに私の小学生時代にもなかった。申し訳ないが、私はしらみを見たことがない。しかし残念ながら、これはデンマークでもスウェーデンでも(なぜかストックホルムが多いのだが)よく聞くのである。しらみは、やはり薬局で市販されている薬入りのシャンプーで退治できるのだが、しらみもやっつけられるだけではたまらない。この薬への抗体をつけてしまって、この薬では効かなくなってしまい社会問題化しているらしい。抗生物質が効かないMRSA(黄色ブドウ球菌)のような存在だ。
しかし人間も黙ってはいない。子どものしらみに手を焼いたデンマークのある父親が、しらみとり専用のくしを発明した。よく捕れるらしい。シャンプーより効果的だそうだ。だが、もっとも効果的なのは頭を丸めることらしい。しらみのせいで職場に行けなくなってしまったある看護師さんは、頭を丸坊主にして職場復帰を果たした。「思ったより爽快。ずっとこうしていようかしら」と、さっぱりとした彼女の頭の写真とともに彼女のコメントが新聞に載っていた。
子どもたちを丸坊主にする必要がなければないに越したことはないが、それもまたかわいいかもなあ。
船渡和音(ふなとかずね)さんのプロフィール
1968年生まれ。都内の大学卒業後、メーカー勤務、出版社での記者を経て、95年に縁あってスウェーデンに移住。96年よりストックホルムにある某大学の日本研究所にて研究アシスタントとして勤務の傍ら、フリーでライター活動も。夫と娘2人で、ストックホルムの郊外に暮らす。
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