「ITで創る21世紀 夢を身近に、未来をカタチに。」をテーマに経済産業省、総務省、文部科学省など6省庁が連携して進める「情報化月間」が始まった。東京都内で3日、記念式典が行われ、企業のIT化などについて講演が行われたほか、情報化の促進に貢献した個人や企業、情報処理システムを表彰、20歳以下の若者を対象に経産省が行っている「U-20プログラミング・コンテスト」の入賞作品の発表と表彰も行われた。今後およそ1カ月にわたって、全国で研修会、講演会などさまざまな行事が行われる。【岡礼子】
「U-20プログラミング・コンテスト」は、次代を担うIT人材を発掘するため、経産省が行っている事業で、今年は26回目。個人、団体合わせて計65件の応募の中から、11作品が入選した。作品発表会で、経産省商務情報政策局の上原智係長は「独創的なプログラムが揃った。プログラムはオープンにして、さらに発展させてください」とあいさつした。
球陽高校のグループ。リーダーの石田智也さん(中央)と赤嶺一樹さん(右)、比嘉慎吾さん
団体部門で最優秀賞に選ばれたのは、沖縄県立球陽高校3年のグループの「iPenGraph」。関数式を入力するとグラフ表示ができて、携帯電話で見ることができる。携帯電話のJavaアプリを使ったプログラムで、リーダーの石田智也さんは「受験勉強で、数学の解説書に式しか書いていないとき、携帯電話でグラフが見られたらいい」と思ったことから開発を決めたと話す。グラフの精度を上げることと携帯電話用に容量の小さなプログラムにすることに苦心した。また、アルファベットは打ち込むのに手間がかかるため、独自の入力画面を作って、関数の名称を選ぶだけで使える仕組みにした。現在はiモード版だけだが、au、ボーダフォン版を開発中。同校では、授業で使うことが決まっているという。
個人部門の最優秀賞は、神奈川県立多摩高校2年の秋山博紀さんが製作した「AKI 黒板 Ex」が受賞した。マウスを操作してパソコンの画面上に字を書くソフトウェアだが、黒板にチョークで書くのとそっくりに見える。「チョークの粉が落ちる」「黒板消しで拭くと文字が消え、拭いた跡がうっすらと残る」「字を書くと、カツカツという音がする」--といった“本物感”に、会場からは「チョークを2本一緒に使えるようにしてはどうか」「ネットワーク機能、画像を貼る機能があれば使われると思う」など意見が相次いだ。
秋山さんは「子供のころ、黒板に書いた“作品”を先生に消されて悲しかった。自由に使える自分だけの黒板がほしかった」と製作の動機を説明、「チョークを横向きして太く描く機能は、すぐにつける予定。ネットワーク対応にしたら、(いろいろな学校で)授業に使ってもらいたい」と熱心に語った。
コンテスト実行委員長の石田晴久・多摩美術大学教授が「コンテストは人材発掘を目指しており、個人部門に優秀な作品が多かったのは心強い」と述べ、個人部門優秀賞を受賞した「ソーシャルネットワークシステム LiFre L1」(函館ラ・サール高校2年 矢萩寛人さん)については、「実名主義のネットワークはこれから重要になる分野。1人でこれだけ規模の大きいプログラムを作った点を評価する」と賞賛した。矢萩さんは「安全なネットワーク社会への需要は増える。実名主義のネットワークで、匿名の利用によって掲示板などで起きているトラブルを解消できるのではないか」と語り、「実生活とどのようにリンクさせるかが今後の課題」と述べた。
会場にいた東京農工大学教授で文部科学省のIT人材育成事業に携わる並木美太郎さんは「高校生に優秀な生徒がいることがわかって頼もしい。こういった優れた人材をもっと評価して、育てていきたい。情報の世界にもスーパースターが必要だ」と語った。
U-20受賞作品
http://www.jipdec.jp/procon/05nyusen.html