◇機会、提供できる社会に
スペースシャトル「ディスカバリー」に搭乗した野口聡一飛行士(40)は先月末帰国し、地元・神奈川県茅ケ崎市などで盛大な歓迎を受けた。子どものころからの大きな夢をかなえた野口さんに教育論などを聞いた。
--子どもたちの理科離れが深刻です。何が問題でしょうか。
子どもたちの興味の対象は、それぞれ違うはず。均一的な教育よりは、興味に応じて能力を伸ばすことが大切だと思う。
--日本では、ゆとり教育の論議が盛んです。
「ゆとり教育」という表現自体が、均一的に感じる。ゆとりを与えることが、能力を伸ばすことにはならない。能力を伸ばすには、それなりの努力もいる。まず、子どもがやりたいことを早く見つけさせてあげることが必要で、それがモチベーション(動機付け)にもつながる。そして方向が決まったらビシビシ鍛え抜いていくべきだ。
--野口さんは、どんな様子だったのですか。
小学生のころから宇宙にあこがれ、中学のときは英語を頑張った。やりたいと思ったとき、学校の英語の授業だけではなく、それ以外にも英語を勉強する機会が探せばあった。そういったところを提供できるような教育、社会であってほしい。
--学習指導要領には、宇宙開発に関する内容がありません。
まず私たちが連続して宇宙へ行き、定着した有人宇宙活動をアピールするべきです。そうすれば、教科書になくても子どもたちは宇宙へ人が行く意味を学んでくれるでしょう。
--日本には独自の宇宙船がなく、連続して宇宙へ行くことは簡単ではありません。
米国のシャトル、ロシアのソユーズ、中国の神舟など、今ある手段を最大限に生かして宇宙を目指し続けることが大切です。私たちが宇宙へ行き続け、国民の皆さんが納得してくだされば、独自の有人宇宙船を持つ可能性も出てくると思う。
--今後の目標は。
次に目指すのは、国際宇宙ステーションでの長期滞在です。そのための訓練に挑戦したい。シャトルの退役が近づき、ロシアの宇宙船を使うことも考えられるので、ロシア語の勉強を、やり直したい。【永山悦子】