日本の古典芸能「狂言」を演じるある一座がこのほど日本各地で公演を行いましたが、演じ手はイタリア人の大学生、独特の言い回しなど、本物にどこまで迫れたのでしょうか。
東京・国立能楽堂の楽屋にはちょっと変わった面々が集まっていました。イタリアからやって来た「ローマKYOGEN一座」。この春卒業した1人を除いて、全員が現役の大学生です。
演目はシェークスピアの芝居を狂言にアレンジしたものです。外国人独特のアクセントは少しあるものの、堂に入った台詞回しと豊かな表情は観客を大いに笑わせます。
素顔はゲームに詳しいちょっとアキバ系の若者たちです。アニメやマンガを通して、すっかり「日本オタク」になりました。大学では夏目漱石や三島由紀夫を研究し、俳句もたしなみます。
「卒業論文の主題は『とりかえばや物語』です。古典文学の・・・知ってますか?」(シルビア・テローニさん)
そして、大学の特別ゼミで出会ったのが狂言です。言葉で笑わせる台詞運び、その奥に見える礼節を重んじる日本の心にもひかれたといいます。
「ヨーロッパと日本の文化がすごく離れていても、この狂言をやっていると近くなると思う」(サルヴァトーレ・マラさん)
少しずつ日本人の観客の笑いをつかむ間の取り方も身に付けて、母国語ではない日本語で堂々たる舞台ができあがりました。
「語学が堪能でびっくり」
「多少ばたっぽいところがあるけど、またそれが何とも言えず新しい味。楽しかったです」
できれば将来も日本で狂言を続けたいという「太朗冠者」ことルカさん、今回の公演を終えて「大笑い 松の木陰に 歓喜あり」と一句。
一座が目指すのは笑いを通した東西の文化の融合です。日本の伝統芸能が遠く離れた2つの国をどこまで近づけられるでしょうか。