宇宙航空研究開発機構(JAXA)は10日、オーストラリアで実施した次世代超音速旅客機(SST)の無人小型実験機の飛行実験が成功したと発表した。02年7月の初実験は失敗したが、3年ぶりの挑戦となった今回はほぼ予定通り飛行した。
実験機は全長11.5メートル、主翼の幅が4.7メートル。午前7時6分(日本時間同6時36分)、実験機はオーストラリア南部のウーメラ実験場から、ロケットに乗せて打ち上げられ、72秒後に高度約19キロで分離した。その後、マッハ2(時速約2400キロ)でグライダーのように滑空し、空気抵抗や飛行性能に関する約800種のデータを取得した。飛行時間は打ち上げから15分22秒だった。
02年の実験では、発射直後に実験機がロケットから脱落した。ロケットの電気部品の設計ミスで回路がショートし、誤った分離信号が出たことが原因だった。JAXAは信頼性向上のため、ロケットだけではなく実験機も含む約100項目の改修を実施した。
旅客機用の超音速機としては、英仏が開発したコンコルド(03年引退)が知られる。しかし、コンコルドは爆音が激しいうえに燃費が悪く、商用としては失敗作とされた。
SSTは低騒音、燃費の改善、安全性の確保を目指す。速度はマッハ2以上を目指し、日本と米ニューヨーク間を約6時間で結ぶ。乗客数はコンコルドの3倍(300人)、航続距離は約2倍に増やす。また大気汚染につながる窒素酸化物の排出量は4分の1、騒音はジャンボジェット並みに抑えるという。
日仏の航空宇宙工業会は今年6月、SSTの共同研究で合意した。JAXAは、今回の実験機が得たデータを今後のSSTの設計に生かすとともに、ジェットエンジンを使った実験機や低騒音の実験機による新たな技術開発を目指すという。【永山悦子】