航空機の乗り継ぎ(トランジット)を悪用し、100人以上のインド人を成田空港から密入国させた事件で、同国籍のブローカー、サトパル・シン容疑者(43)=出入国管理法違反容疑で逮捕=が、栃木県警鹿沼署の捜査本部の調べに対し、密航者から1億円以上を集めたことを認めたうえで「インドに豪邸を建てた」と供述していることが分かった。捜査本部は、金銭目的で密航を指南したと判断、7日、同法の集団密航助長容疑で、新たに逮捕状を取った模様だ。【小林直】
逮捕状を執行すれば、シン容疑者の逮捕は3度目となる。9月末の強制捜査に端を発した捜査は、トランジットを悪用した初めての集団密航事件に発展する。
捜査関係者によると、シン容疑者は捜査本部の調べに対し「出身地のインド北部・パンジャブ州から、100人以上のインド人を送り込んだ」と容疑を認めている。さらに、1人当たりの報酬を40万~200万円と説明したうえで、集めた1億円超の使途について「パンジャブ州に2階建ての高級住宅を購入した。メードやガードマン、運転手も雇っている」と供述している。現地に詳しい人によると「大きな邸宅でも日本円で1000万円を超えることはない」という。
一方、東京入国管理局と栃木、茨城の両県警による合同捜査で、シン容疑者の手引きで不法入国したインド人4人が逮捕されていたことも新たに判明した。4人は捜査本部に「シン容疑者に言われた通り、成田空港の入国審査官に『乗り継ぎ時間を利用して観光したい』などとうそを言い、寄港地上陸許可を得た」と話しているという。
捜査本部は、シン容疑者と4人の供述がほぼ一致していることから、宇都宮地検と協議し、集団密航助長容疑の適用が可能と判断した。
捜査本部は、シン容疑者を9月27日、同法の不法残留ほう助容疑で逮捕するとともに、栃木県上三川(かみのかわ)町上三川の自宅などを家宅捜索。その結果、シン容疑者がインド人らを工場に送り込み、不法就労させていた疑いが強まったとして、10月18日、不法就労助長容疑で再逮捕していた。