広島市安芸区で市立矢野西小1年、木下あいりちゃん(7)が殺害された事件で、段ボール箱が見つかった空き地近くの民家に、あいりちゃんが寄るのを楽しみにしていた飼い犬がいる。この家は、最後に目撃された場所からすぐの所にあり、近所の子どもは、犬に会うため、わざわざ回り道することもあったという。飼い主の男性(47)は、「あいりちゃんが愛犬に会いにこの小道へ入り、事件に巻き込まれたかもしれない。犯人を許せない」と唇をかんだ。
犬は、雑種のオス。捨て犬だったが、15年前、右足を骨折して地域に迷い込んだところを男性が保護し、飼い始めた。めったにほえない人なつっこい性格で、通りがかる住民らに愛くるしく、しっぽを振る。
昼になると人通りが少ない路上で、気持ちよさそうに寝そべるのが日課という。同校の児童らも下校中に立ち寄り、頭をなでたり、給食の残りを与えるなどしている。あいりちゃんも、頻繁に会いに来ていた。
「あの子じゃなければいいが……」。事件を知った後、男性は祈ったが、新聞で顔写真を見ると、あいりちゃんだった。
男性は今年9月ごろ、下校中に飼い犬に会いに来たあいりちゃんに、「今日は帰りが早いね」と話しかけた。あいりちゃんは「運動会の予行演習だから早いのよ。おじちゃん」とにっこり笑い、犬をなでたという。
「やさしくて明るい子だったのに。理不尽に命が奪われて」。男性は、悲しみと怒りが入り交じった険しい表情で語った。
【大場弘行、堀江拓哉】