【パリ福井聡】スペイン北部バスク地方の独立を主張する民族政党らが、ピカソがスペイン内戦下の1937年、当時のフランコ将軍を支援するナチスがバスク地方の小都市ゲルニカを空爆したことに怒って描いた名画「ゲルニカ」のバスクへの返還を要求している。
バスク地方政府はこのほど、非合法組織「バスク祖国と自由」(ETA)が3月に「恒久的な停戦宣言」したことを機に、「民主政治への移行と円滑な和平交渉に寄与するはず」と、「ゲルニカ」をバスク地方の中心ビルバオにあるグッゲンハイム美術館に移すよう要求した。
ゲルニカはバスク語で「聖なる柏(かしわ)の木」の意で、数世紀にわたってスペイン国王がこの木の下で「バスク地方の『特権』への尊重を認めてきた」とされる民族のアイデンティティーの象徴。バスク各党の政治家は今も就任式で「バスクの地、ゲルニカの木の下で、住民を代表し職務遂行を誓う」と宣誓している。
しかし、現在「ゲルニカ」を展示しているマドリードのソフィア王妃芸術センターは「度重なる移送で作品はとても再移送に耐えられない」と拒否。「ゲルニカ」は内戦中、資金集めのため各地を巡回した後、39年に欧州の戦火を避けて米ニューヨーク近代美術館に預けられ、フランコ将軍没(75年)後の81年、スペインに返還された。
毎日新聞 2006年6月13日 13時01分