ブラジル選手のパスが面白いように通り、正確にコントロールされた強烈なシュートが決まる。23日未明のW杯、日本対ブラジル戦。後半はまるで大人と子どもの戦いだった。眠い目をこすりながらテレビの前で応援した多くの人は、試合終了の瞬間、徒労感とともに1対4という結果以上の力の差を感じたことだろう。
それでも、日本がW杯に初出場した98年仏大会でFWだった呂比須ワグナーさんは、現地で観戦後、記者の取材に、世界の強豪が敗退を繰り返し強くなったことや、プロ(Jリーグ)発足13年と日が浅いことなどを挙げ、楽観的にみる。そのうえで、「勝つためにもっと激しく、もっとずる賢いサッカーを」と注文を付けた。
ゲーム終了後、中田英寿選手がピッチに倒れこみ、涙を流し5分以上にわたって横たわっていた。テレビはそんなヒデの姿を繰り返し報じた。「激しく」「ずる賢く」。そうした言葉とは正反対の光景だ。「選手だけでなく、メディアも感傷に浸りすぎている。これでは勝てない」と見たら厳しすぎるだろうか。【照山哲史】
毎日新聞 2006年6月26日 13時06分