バンコクの街では毎週月曜日、黄色いシャツ姿が市民の半分近くを占める。プミポン国王の即位60周年を祝う人々の習慣だ。
タイでは生まれた曜日に重要な意味がある。曜日によって性格が決まるともいわれ、それぞれの色が決まっている。国王が生まれた月曜日は黄色。だから人々は月曜日ごとに黄色い服を身につけ、王様を祝う気持ちを表す。日本人には想像できないほど、タイ人の国王崇拝の念は強い。
一般参賀があった先月9日、この日ばかりは黄色い服装でないと取材できないといわれ、黄色のポロシャツを着て宮殿前広場に出かけた。10万人近い黄色の群衆が広場を埋め尽くしていた。
せっかくの機会なので、その日は黄色シャツで過ごした。街を歩くと、どこもかしこも黄色。他の色の服を着た外国人観光客が場違いな存在のように映る。
黄色い風景に身を置いていると、胸の中がほんわり温かくなってきた。黄色の服を媒介に、何ともいえない連帯感に包まれてくるのだ。一日だけ、自分がタイ人になったように感じた。【藤田悟】
毎日新聞 2006年7月6日 12時47分