小学生が授業で習う鍵盤ハーモニカ。それだけを使って、バッハ、モーツァルト、ラフマニノフといったクラシックから、ジャズ、歌謡曲などさまざまなジャンルの曲を演奏する。新しい音楽世界を切り開こうと、CDを自費制作した。鍵盤ハーモニカのCDは珍しいという。
小学3年からピアノを習い始めた。短大卒業後、ピアノ教師の傍ら、声楽家の夫とともに信州で演奏活動を続けてきた。転機は3年前。合唱曲のバイオリンのパートをたまたま鍵盤ハーモニカで弾いてみた。ほんの遊び心だった。子どものための楽器というイメージが強いが、呼吸を微妙に調節すれば、自在な音を奏でることができ、複数の鍵盤を押さえれば和音を出すことも。「いろいろな音が出ることに気づき、とても新鮮な感じを受けた」と振り返る。
さまざまな曲に挑みながら、レパートリーを広げていった。地元の演奏会で披露したところ、好評を博し、「いけるかな」と手応えを感じた。CDを聴いた人たちからは「この楽器でこんな演奏ができるんだ」「どんなふうに演奏しているかDVDも見たい」といった反響が届く。
最近は「鍵盤ハーモニカの魅力を多くの人に知ってもらうために、各地で演奏会を開きたい」と欲張りな気持ちもわいてきた。楽器をこなすには大きい肺活量が必要で、日々、柔軟体操も忘れない。「歴史の一歩を踏み出す」緊張感と夢に、心が熱くなる。【小島正美】
【略歴】狭間由香(はざま・ゆか)さん。長野県松本市出身。昭和音楽大短期大学部卒業。41歳。CDは2000円で販売している。問い合わせは、狭間さん(0263・26・4762)へ。
毎日新聞 2006年7月2日 0時18分