大手商社の丸紅が、産業再生機構の保有するダイエー株(発行済み株式の33.6%)をすべて買い取って44.6%を握る筆頭株主になる方針を固め、2年目を迎えたダイエー再建を主導することになった。しかし、ダイエーの既存店売上高は前年割れが続き、営業力の回復は遅れている。少子高齢化や異業種からの参入で、業界内の競争が激化する中、丸紅の手腕が厳しく問われることになる。
丸紅は、食品スーパーのマルエツや東武ストアの大株主で、食品部門の強化を進めている。05年3月に、再生機構から支援企業に選ばれたのも、ダイエーが食品中核のスーパーとして再生するうえで、マルエツなどとの相乗効果や商品供給力が期待されたためだ。
実際、07年2月期の第1四半期(3~5月)決算で既存店の売上高をみると、全体が前年同期比1%減だった中で、食品は前年実績を1%上回り、回復の兆しを見せている。
しかし、回復の遅れは否めない。その原因として、ある食品メーカーは「丸紅には系列に有力な食品卸がない。ダイエーほど大きな小売業抱えるには、足りない部分が大きい」と指摘する。「人材面にも不安がある」(大手流通企業の役員)との声も根強い。丸紅の4月の人事異動で、マルエツなどを手掛けてきた食料専門の役員が海外に転勤したことも不安材料とされる。
食品以外の状況は一段と厳しい。今期第1四半期の既存店の売上高でみると、衣料品が同4%減、生活用品は同3%減だった。筆頭株主になる丸紅は、こうした部門の立て直しにも責任を負うことになる。
しかし、再建の道筋は容易に見えそうもなく、業界内では早くも、「丸紅主導の再建がうまくいかなければ、再びダイエー株が放出されることもある」との憶測も出始めた。【宇田川恵】
◇再生機構の業務にメド、その役割には検証必要