日本経済新聞社の社員によるインサイダー取引疑惑で、この社員が不正に2千数百万円の利益を得た疑いが強まり、東京地検特捜部は、証券取引法違反(インサイダー取引)容疑で25日にも立件する方針を固めた模様だ。特捜部とともに調査を進めてきた証券取引等監視委員会も、この社員を同法違反容疑で特捜部に告発するとみられる。
関係者によると、日経新聞の東京本社広告局の男性社員(31)は、新株発行や決算など企業の重要な決定事項を、全国紙などに掲載して知らせる「法定公告」を悪用。紙面化前に内容を把握して株を購入し、紙面掲載後に株価が値上がりしたのを確認して高値で売り抜けていた。この手口で昨年12月から今年2月、東証1部上場の子供服販売会社や同2部上場の文具製造会社などの株を売買し、2千数百万円の利益を得たとされる。
社員は購入する銘柄を選ぶ際、広告局内のパソコン端末に入っている公告の掲載予定の一覧表を見て、値上がりの可能性が高い「株式分割」「増資」などに関する情報を集めていたという。いずれも取引はインターネットで行い、会社の端末のほか、ネット接続できる喫茶店から注文したこともあったという。
同社は今年2月、不正取引について証券監視委の調査を受けていることを明らかにし、蔭山孝志・広告担当常務の辞任や杉田亮毅社長ら3人の役員報酬カットなどの処分を公表。社員はこれまでの社内調査に「ゲーム感覚でやってしまった」と認めている。
毎日新聞 2006年7月25日