W杯ドイツ大会で優勝候補筆頭に挙げられたブラジルは、準々決勝であっけなく敗退した。「魔法のカルテット」の言葉に象徴されるように、名うてのテクニシャンを集めた半面、精神的な支柱が不在でチームの統率力も欠けていた。スター選手に甘いパレイラ前監督にも批判が集中した。今回、「ファンは熱い監督を求めている」とテイシェイラ会長が話した通り、“闘将”ドゥンガにはこれまでブラジルに欠けていた部分を植え付ける役割が期待される。
94年W杯米国大会では主将としてチームをけん引。6大会ぶりの優勝を母国にもたらした。激しいタックルでボールを奪い、中盤の底からアウトサイドで良質のパスを前線に供給する一方、チームメートを叱咤(しった)し、鼓舞する卓越したリーダーシップで勝利に貢献した。
95年に来日し、Jリーグの磐田で4年間プレー。ピッチ上でチームメイトを容赦なく怒鳴り飛ばす姿は磐田名物になり、闘志を前面に出す姿勢が、チームを強豪に押し上げた。日本が初出場した98年W杯フランス大会では「代表選手には持っている力を出せる強くて熱いハートが必要」と同僚の中山の代表入りを支持した。
ピッチ外では「ドゥンガ基金」と呼ばれる社会福祉活動を率先していることでも有名。「サッカーで成功した自分の幸せを考えると、幸せでない人に何かをせずにはいられない」と、来日した際には募金活動などに熱心に取り組んでいる。
激しさと優しさを持つ男が取り組むチーム作り。華麗なサッカーに熱い魂を宿らせることができるか。母国のみならず、日本を含めた世界のサッカー・ファンの目を引きつけることだろう。【仁瓶和弥】
毎日新聞 2006年7月25日 10時48分