【エルサレム樋口直樹】レバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラは2日、イスラエル北部に230発以上のロケット弾を撃ち込んだ。7月12日の戦闘開始以来、1日当たり最多の発射数を記録した。地元メディアによると、2日にレバノン南部へ侵攻したイスラエル軍部隊は1万人規模に膨れあがり、各地で激しい空爆が繰り返されたが、ヒズボラはなお一定の勢力を保ち、頑強に抵抗している。国連主導の国際部隊派遣の協議が遅れるなど、停戦の行方はいまだ不透明な状態が続いている。
レバノン南部からヒズボラが発射したロケットは、イスラエル北部の第3の都市ハイファをはじめ観光地ティベリヤやナハリヤなどに着弾。1人が死亡した。うち1発はレバノン国境から約70キロ離れたヨルダン川西岸のパレスチナ自治区ジェニン近郊にまで達した。AP通信によると、ヒズボラによるロケット攻撃の過去の最多数は先月26日の166発だった。この約3週間でイスラエルに撃ち込まれたロケットは2000発を超えた。
ヒズボラのアブゼイナブ報道官は2日、BBCアラビア語放送のインタビューで「今朝から(イスラエル領内に)降り注いだロケットや、70キロ以上の射程を持つミサイルの発射は、レバノン人の抵抗がいまだに高い能力を持っていることの証明だ」と語った。
イスラエル紙ハーレツ(電子版)によると、イスラエル軍は国境の北側6~8キロの範囲からヒズボラを排除し、ここを事実上の「安全保障地帯」として確保する方針。国際部隊が派遣され次第これに引き継がれるという。オルメルト首相は、強力な執行力を持つ国際部隊がレバノン南部に展開するまで、ヒズボラとの停戦には応じられないと主張している。
しかし、国際部隊への参加が予想される欧州諸国などの間には、部隊の規模や権限、派遣の時期などをめぐる意見の相違があり、現地派遣までにはなお時間がかかるとみられている。
AP通信によると、戦闘開始以来のレバノン側の死者は少なくとも548人に上り、うち477人は民間人。レバノン保健相は行方不明者を含めると死者数は約750人に上る恐れがあるとしている。イスラエル側では兵士36人と民間人19人の計55人が死亡している。
毎日新聞 2006年8月3日