【ワシントン笠原敏彦】「ある国連高官は加盟国批判を仕事にしているかのようだ」。マコーマック米国務省報道官は2日、レバノン情勢での米英両国の「強引さ」に警告を発したブラウン国連副事務総長に対し、異例の個人批判で応酬した。レバノン情勢に対処する安保理決議の採択に向けた協議が進む中で噴出した米国と国連の「相互不信」は、協議の難航ぶりを反映したものと言えそうだ。
国連ナンバー2のブラウン副事務総長は2日付英紙フィナンシャル・タイムズとのインタビューで、イラク戦争を主導した米英がレバノン情勢の安保理決議でも自己主張を押し通すことは有益でないとの見解を示した。副事務総長は「米英にとっての挑戦は外交努力で他国と主導権を分かち合う必要性を認識することだ。米英とイスラエルの取引と見られてはいけない」と直言した。
また、米国がテロ組織に指定するイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラについて「彼らのルーツは歴史的に(国際テロ組織)アルカイダとは全く異なり、南部レバノンでは政治的な支持がある」と指摘。米国がイスラエルとヒズボラの戦闘を対テロ戦争の一環と見ていることを「有用でない」と間接的に批判した。
これに対し、マコーマック報道官は定例会見で「全く誤った、場違いの発言」だと反論し「彼は自分のやるべき仕事に専念すべきだ。国連改革では多くの仕事が残されている」と皮肉たっぷりにやり返した。
副事務総長は6月には「米国が国連を弱体化しようとしている」との発言で米国の反発を買ったばかり。
レバノン情勢の安保理決議では「戦闘の即時停止」を最優先する決議草案を提示したフランスと米国の間で調整が続いている。
毎日新聞 2006年8月3日 10時28分