記者になりたての25年前、1リットル160円もするガソリンを燃やして取材に走っていた。そのせいか、「140円超」にも驚きは小さかったが、最近知った「ピーク・オイル論」にはうなった。
石油の値段は20年以上、安値が続いた。いろいろな要因はあるが、単純に言えば、「石油はたくさんあるので安くて当たり前」という楽観論が、世界の市場を覆ってきたせいだ。
しかし、今、「石油は足りないようだ」と考える人が増えてきた。しかも、「中国やインドなどが石油をどんどん消費するから」という単純な見方だけでない。もっと根本的な石油不足がささやかれている。それがピーク・オイル論で、次のような考えだ。
油田はだんだん油を噴出する力が落ち、採掘にお金や労力がかかるようになる。そんな老いた油田が世界中で増え、元気な大油田は見つかっていない。天然ガスなどの代替エネルギーは、プラスチックや繊維、肥料、農薬の原料にはなりそうにない。石油のさらなる高騰と不足による危機は時間の問題ではないか。
日本の第一人者、石井吉徳・元国立環境研究所長は、自著などで「集中から分散」「地産地消」「小さいことは美しい」「効率より自然」「無限の成長を望まない」などのキーワードをあげ、「安くて豊富な石油に支えられた大量生産、大量消費、大量廃棄の社会を変えていく必要がある」と説いている。
「しばらく、遠出のドライブは控えます」では足りず、省エネも新エネも間に合わない。ついに、そんな時代が始まったと覚悟すべきなのかもしれない。(経済部)
毎日新聞 2006年8月4日