「定家筆俊頼髄脳」の藤原定家直筆の部分=京都市上京区の冷泉家時雨亭文庫で、小松雄介写す
藤原定家の系譜を引く歌道家・冷泉(れいぜい)家(京都市上京区)の歌書などを保存する財団法人「冷泉家時雨亭文庫」(冷泉為人理事長)は9日、新たに発見された古写本が、平安時代の歌人・源俊頼(としより)が書いた和歌教本「俊頼髄脳(ずいのう)」を、1237(嘉禎(かてい)3)年に定家が写したものだったと発表した。これまで確認されていた江戸時代の写本より約500年古く、表現も、未発見の原本に近いとみられ、同文庫は「重要文化財級の資料」としている。
昨年9月、冷泉家の土蔵「御新(おしん)文庫」の調査中に見つかった。縦16.5センチ、横15.9センチ、厚さ2.2センチで486ページ。調査を担当した同文庫主任研究員の赤瀬信吾・京都府立大文学部教授(国文学)によると、題名の表記はなかったが、内容から断定。巻末に年号の記述があり、筆跡から当時70代半ばの定家の筆によるものと分かった。巻頭と巻末以外は定家の側近が書き、定家が修正の筆を入れていた。定家は新古今和歌集の選者の一人。
「髄脳」とは和歌の奥義の意で、源俊頼が12世紀に関白・藤原忠実の命を受け、忠実の娘で鳥羽天皇の后(きさき)・勲子(くんし)に献上したもの。歌にまつわる故事や伝承が説話的に書かれており、平安末期の「今昔物語集」の説話の出典本ともされる。【小川信】