双子の選手が別々のチームから出場した。30日に本塁打を放った札幌市(JR北海道)の兄、中野孝昭外野手(26)と、29日に鈴鹿市(ホンダ鈴鹿)に補強選手として加わって出場した弟、宏昭外野手(26)。初めてそろって出場し、準決勝まで勝ち進んでの兄弟対決を目指したが、ともに初戦敗退。兄弟は「東京ドームでの対戦が夢。来年こそ」と誓い合った。
和歌山県海南市生まれ。ともに小学2年で野球チームに入った。周囲から比較され、時にはレギュラー争いをしたこともあったが、中学、高校、東北福祉大と一緒だった。顔は「帽子をかぶると親でも見分けがつかない」(父親の家繁さん)。性格は「兄はやんちゃで活発。弟は落ち着いているけど負けず嫌い」(母親の一世さん)と言う。
社会人になり孝昭選手は仙台市、宏昭選手は奈良県のチームに入ったが、昨年、それぞれのチームが廃部に。選手生活の危機を相談して乗り越えた。照れくさくて互いに口にしたことはないが、兄は弟を「小技もパワーもある嫌な選手」、弟は兄を「大した長打力だ」と認めている。
「2人で東京ドームに」が合言葉。孝昭選手は04年から連続出場中。しかし、宏昭選手のチーム(一光)は敗者復活戦で敗退した。「今年もダメか」とあきらめたところ、ホンダ鈴鹿の補強選手の声が掛かった。
29日の弟の試合では、兄が両親とスタンドから見守ったが惜敗。弟は「いい経験になった。来年は自分のチームで来て、孝昭と対戦したい」。兄は30日の試合後、「昨日は、宏昭が悔しがっていたので、その分自分が打ってやると気合を入れたのに。一度でいいから、このドームで対戦したい」。両親は「夢が実現したら、スタンドのどこに座ろうか。どっちも応援できるよう、真ん中のバックネット裏しかないな」と楽しみにしている。【合田月美、岸本悠】
毎日新聞 2006年8月30日