青森県埋蔵文化財調査センターは13日、青森市安田近野の近野遺跡から出土した縄文時代後期中ごろ(紀元前1500年前後)の石冠(せっかん)に、人物3人の姿が刻まれていたと発表した。同センターは「人物が刻まれた石冠は初めて」と話している。
「石冠」は台形やだ円形に成形された縄文時代の石器で、用途は不明。儀礼などに使われていたとの説がある。03年8月の調査で発掘した石冠(縦6.1センチ、横7.4センチ、厚さ4.1センチ)を今年7月に洗浄したところ、3人の姿が浮かび上がった。同じ場所から見つかった土器の特徴で、石冠の時代も特定できたという。同センターは「家族を描いた可能性もある」とみている。
奈良文化財研究所の岡村道雄企画調整部長は「人物が描かれた土器は東北北部で十数例あるが、石冠に刻まれたケースは初めてだろう。手足の指まで詳細に描くことは、縄文時代では珍しい。当時の文化水準や精神生活を知るうえで貴重な資料だ」と話した。
石冠は三内丸山遺跡展示室(青森市)で10月5日まで展示される。【村松洋】
毎日新聞 2006年9月14日