現在使っている電話番号のまま携帯電話会社を乗り換えられる番号ポータビリティー(MNP)が24日から始まる。激しいシェア争いを繰り広げている携帯電話だが、MNPによるさらなる競争の加速を、価格やサービス面での改善につなげてほしい。
MNPに備えた競争はすでに始まっている。家族割引や未使用の定額通話分の繰り越しなど、携帯電話各社はユーザーを囲い込むための割引サービスを次々に打ち出している。地上波デジタルテレビへの対応など新端末も次々に投入されている。通話エリアの拡大競争も展開され、電波が届かない穴を埋めるなど、利便性の改善につながっている。
電話番号が変わるため他の携帯電話に変更できなかった人たちがどの程度いて、そのうち実際に移行する割合がどうなるのかははっきりしない。メールアドレスは引き継ぐことができないうえ、解約と新規契約の経費が5000円程度かかるということもあり、事前予約の出足は鈍かったようだ。
しかし、携帯電話はすでに9000万台以上普及して成熟市場となっている。自社の利用者を引きとめ、他社の利用者を取り込むことが携帯電話会社にとって重要になっており、料金やサービスで後れをとると、顧客離れにつながりかねない。新規参入も予定されており、MNPの開始を機に競争にさらに拍車がかかるのは間違いないだろう。
利用者にとって選択肢が広がるのは結構なことだ。ただ、携帯電話の料金制度やサービスはかなり複雑だ。MNP対策で新たな割引制度が導入され、ますます理解しづらくなっている。料金の仕組みをシンプルにして、利用者が比較しやすいようにしてほしい。
携帯電話の販売方法も検討が必要だ。電話機を格安で販売し、値下げした分は月々の利用料の中から回収するというのが現在のモデルだ。しかし、これでは電話機を頻繁に取り換えない人の料金が割高になってしまう。
音楽配信など高速のデータ通信を利用したサービスの利用が広がっている。クレジットカードや電子マネーの機能を備えた携帯電話の普及も進んでいる。便利になるのはいいことだが、多重債務が問題となっているだけに、キャッシングなどで過剰融資が起こらないようにすべきだ。
携帯電話の急速な普及と、ネット接続などデータ通信を使ったさまざまなサービスは私たちのライフスタイルを変えた。その一方で、迷惑メールや、出会い系サイトの利用者が犯罪に巻き込まれるなど負の部分もある。第3世代携帯電話より高速でデータ通信が可能な広帯域無線LAN(構内通信網)など、新技術によって携帯電話をめぐるビジネスはこれからも変化していくだろう。
その際、重要なのは、安全で質のいいサービスが低廉な価格で供給される仕組みを確保しておくことだ。MNPのような利用者の立場からの施策が今後も推進されることを期待したい。
毎日新聞 2006年10月24日