福島県発注工事を巡る汚職事件の舞台となった木戸ダム(楢葉町)の入札前年に当たる99年秋、鹿島(東京都港区)、前田建設工業(千代田区)、水谷建設(三重県桑名市)の3社の営業担当幹部と元県土木部長の4人が会合を開き、前田建設などの共同企業体(JV)を受注予定社と決めていたことが分かった。決定内容は前知事、佐藤栄佐久容疑者(67)=収賄容疑で逮捕=に報告された疑いが強く、東京地検特捜部は、不正入札への関与を裏付ける重要な事実とみている模様だ。
木戸ダムを巡る受注調整の詳細が判明したのは初めて。
業界関係者によると、会合は99年11月、仙台市内で開かれた。東北地方全域の土木建築工事で仕切り役を務め「天皇」とも呼ばれた鹿島の元東北支店副支店長(76)▽前田建設の寺島一雄・元副会長(74)=贈賄の時効成立▽水谷建設元会長の水谷功被告(61)=当時副社長、法人税法違反で起訴=に加え、競売入札妨害容疑で自宅を捜索された江花亮・元県土木部長(70)=福島県建設技術センター理事長=の4人が出席した。
他のゼネコンも受注を希望していたが、他のダム工事の落札状況や、福島県での営業活動などから、前田建設のJVが落札し、水谷建設に下請け発注する枠組みを決定したという。
江花元部長は特捜部の調べに、当時現職の土木部長だった坂本晃一・県建設技術センター元理事長(65)=競売入札妨害容疑で逮捕、処分保留で釈放=に会合の内容を伝えた事実を認めた。また、鹿島元副支店長は、前知事実弟で「郡山三東スーツ」(福島県本宮町)会長、佐藤祐二容疑者(63)=収賄容疑で再逮捕=に伝達した事実を認めたとされる。
さらに、江花元部長と鹿島元副支店長はいずれも「その後、前知事に伝わったと聞いている」と供述しており、特捜部は、前知事が不正入札を了承したうえでダム工事を発注したとみて追及しているとみられる。
木戸ダムの一般競争入札は00年8月にあり、前田建設などの共同企業体が約206億円で落札、水谷建設が掘削工事などを下請け受注した。前知事らはこの見返りにスーツ社の旧本社跡地を水谷建設に約9億7000万円で買い取らせた疑いが持たれている。
鹿島東北支店は毎日新聞の取材に「事件のことは一切ノーコメント」とし、前田建設、水谷建設も回答を拒否した。
毎日新聞 2006年10月25日