06年3月、北九州市若松区の自宅で自殺した小学5年の男児(当時11歳)の両親が15日、「自殺は教師の体罰などが原因」として、同市を相手取り、総額約8100万円の損害賠償を求め福岡地裁小倉支部に提訴した。両親は「事実を究明し、体罰や子どもの自殺という問題を多くの人に考えてもらいたい」と訴えている。
提訴したのは同区、永井昭浩さん(46)と妻和子さん(45)。自殺した長男で当時、市立青葉小学校に通っていた匠君の実名と写真を同日、公表した。
訴えによると、永井君は05年4月ごろから担任の女性教諭(51)=退職=に体罰を受けるようになり、泣きながら帰宅することもあった。06年3月16日には胸ぐらをつかまれ、床に押し倒されるなどした。永井君はその直後に教室を飛び出し自宅で首をつって自殺した。
両親は継続的な体罰と自殺当日の体罰を挙げ、「極度の屈辱感を味わわされ、自らの死をもって抗議した」と主張。元教諭や学校について「教室を飛び出した後も保護者に連絡せず、事後配慮義務を怠った」と指摘。市教委について「自殺後に実施した児童へのアンケートを廃棄するよう指示するなど真相究明に逆行した」と述べた。
遺影とともに会見した両親は「事実究明を求めてきたが、手がかりになるはずだったアンケートが廃棄されてしまった。なぜ命を絶たなければならなかったのか。事実を明らかにするため、裁判をすることにした」と説明した。
市教委の半田康行・指導部長は「訴状が届いていないため、コメントは差し控えさせていただきます」と述べた。【太田誠一】
毎日新聞 2007年3月16日 10時51分