IT時代を駆け抜けた「風雲児」を、司法は厳しく断罪した。ライブドア前社長、堀江貴文被告(34)に対する16日の東京地裁判決。捜査段階から一貫して無罪を主張した前社長に、実刑が言い渡された。その瞬間、堀江前社長は一礼しながらも、納得のいかないような表情を見せた。【銭場裕司、篠田航一、伊藤一郎】
午前10時、104号法廷。小坂敏幸裁判長が「被告人、前へ」と証言台の前に立つよう促した。法廷が静まり返り、裁判長が「被告人を懲役2年6月に処する」と主文を読み上げると、記者席の報道陣が速報のために一斉に飛び出した。
短髪に黒いスーツ、白いシャツにネクタイ姿の堀江前社長は、軽く頭を下げた後、軽く後ろにのけぞるような仕草をした。被告席に戻った後は顔をやや赤らめ、口をとがらせて、納得がいかない表情のまま、渡された判決文に目を落とした。
これより前の午前9時25分。堀江前社長は、一般の出入りが禁止された東京地裁の東側玄関から弁護士と列を組んで入ってきた。上空を旋回するヘリコプターを一瞬見上げ、報道陣のフラッシュが一斉に光る中、法廷に直接入れる通用口から地裁の建物に。ノーネクタイの表情は硬く、口を真一文字に結んだまま。混乱を避けるための特別の措置は、半年前の初公判と同じだった。
「日本人のいない場所に行きたい」。判決を前に、堀江前社長は年末年始、裁判所の許可を得てアフリカを旅した。人目のつかない場所を望み、名前を知られていない海沿いの国での休暇をのんびり過ごした。
検察側が論告求刑を行う前の昨年12月初旬には、鹿児島県の徳之島まで足を伸ばし、マリンスポーツを楽しんだ。関係者によると、前社長の保釈条件では3泊4日以内の国内旅行には裁判所の許可が必要ないため、こうした旅行にしばしば出掛け、海のある場所では必ずダイビングに興じていたという。
事業への意欲も変わらず、出資者として宇宙関連事業に関心を示すとともに、人の寿命や「不老長寿」などを科学的に研究する「ライフサイエンス」分野にも興味を寄せている。とりわけ「バイオテクノロジー」や「サイボーグ技術」に関する海外の科学者の著作を熱心に読み、意欲を奮い立たせていたという。
毎日新聞 2007年3月16日 10時44分