イングランドプレミアリーグ・トットナムのイングランド代表GKポール・ロビンソン(27)が驚がくの直接FKを決めた。17日にホームで行われたワトフォード戦で後半18分、自陣から蹴った88メートルのFKが強風に乗り、ワンバウンドで相手ゴールに飛び込んだ。相手守備陣のミスに助けられたとはいえ異例のロングゴール。代表のライバルGKフォスターから得点を奪い、24日の欧州選手権予選イスラエル戦先発へ弾みをつけた!?
強風に乗ったボールがぐんぐんと飛距離を伸ばしていった。ペナルティーエリアの手前ではワトフォードDFシットゥがヘディングでクリアする構えを見せていたが、直前になってなぜか落下地点から避難。定位置よりも前方に出ていたGKフォスターは、目の前で手が届かない高さまで跳ね上がったボールをぼう然と見送るだけだった。
「前線のストライカーにボールを送ろうとしただけなんだけど、まさか入るとは…。入ってなかったら“蹴り過ぎだろ”って怒られていたよ」
殊勲のトットナムGKロビンソンは苦笑いで振り返った。1-0の後半18分、自陣ペナルティーエリアの左脇で得たFKだった。地元紙の報道では相手ゴールまで実に88メートル。リーグ屈指のキック力を誇るとはいえ、直接得点を狙うはずもない。ところが前線目掛けたキックを強風と相手の連係ミスがアシスト。異例の珍ゴールとなった。
GKが得点を決めた例としてはPKや敵陣ペナルティーエリア付近からのFKで60得点以上した元ブラジル代表ロジェリオ・セニや元パラグアイ代表チラベルトが有名。15日のUEFA杯シャフタル・ドネツク戦で得点したセビリアのパロプのように終了間際のCKで攻撃参加して決めるケースもまれにある。ロビンソンもリーズ時代の03年リーグ杯で終盤のCKから得点経験があるが、自陣深い位置でプレースキックを蹴って直接ゴールラインを破るのは極めて珍しい。
地元メディアの報道では27年のFA杯でゴールキックを直接決めた例もあるというが、この時のピッチサイズは不明で正確な距離は分からない。プレースキックから直接挙げた得点では今回の88メートルが歴代上位の記録的な数字であることは間違いなさそうだ。
失点したGKフォスターは2月の親善試合スペイン戦で正GKロビンソンに代わって先発した代表でのライバル。だが、24日の欧州選手権予選イスラエル戦で先発奪回が有力視されているロビンソンは相手を気遣った。
「みんなフォスターが前に出過ぎていたと言うかもしれないが、最後に逃げ出したのはDF。代表では今回の一件には触れないことにするよ」
ロビンソン自身、06年10月のクロアチア戦でイレギュラーしたバックパスを空振りして失点。バッシングを浴びた経験がある。フォスターの失態も人ごとではなく「サッカーでは起こること」と話した。事の成り行きはどうあれ、母国イングランドでサッカー史を彩る奇妙なゴールが生まれたことだけは確かだ。
スポーツニッポン 2007年3月19日